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導入コストほぼ“0円”でマンションの価値を上げる。オートロックでも「置き配」できるAmazon Keyとは
- 入居者サービス
2025.05.22

近年のEC利用の増加に伴い、マンション選びにおいても荷物受け取りの利便性は重要な要素となっている。宅配ロッカーはすでに新築マンションでは必須の設備になっているが、ロッカーまで荷物を受け取りに行く手間や荷物のサイズによっては使用できないなど課題も多い。
そんな中、オートロックマンションでも玄関前への置き配を可能にすることで注目を集めているのが、アマゾンジャパン合同会社(以下、アマゾン)が展開する「Amazon Key」だ。同サービスはすでに日本で1万5000棟以上に導入。アマゾンと三井不動産レジデンシャルリースはいち早く協業を発表し、2025年2月末時点で三井不動産レジデンシャルリースの管理する賃貸マンション447棟・20,085戸に導入されている。
ご入居者様の満足度だけでなくマンション自体の価値向上につながる可能性を秘めているAmazon Key。アマゾンの河合麻衣子氏に、サービスの概要や今後の展望についての話を聞いた。

アマゾンジャパン合同会社 河合麻衣子氏
置き配の利便性とセキュリティを両立するAmazon Key
──Amazon Keyが生まれた背景について教えてください。
アマゾンの配送では、オートロックマンションにお住まいのお客様の8割以上が置き配を希望されます。
ただ配送先がオートロックのマンションだった場合、ご不在時は玄関前まで行けないので、再配達になってしまいます。「今日受け取りたかったのに再配達になってしまった」というお客様の声に応えるため、Amazon Keyを始めました。
──Amazon Key の仕組みについて詳しく教えていただけますか?
アマゾン製のエントランス解錠機器を設置することで、アマゾンの委託先の配達員がオートロックを安全に解除することができる仕組みです。
配達員は専用のアプリを使用しており、そのマンションに配達する商品を持っている場合のみ、アプリ上に「ロック解除」ボタンが表示されます。そこでボタンを押すと、クラウドサーバーを介して解錠端子に信号が送られ、ドアが開きます。

エントランス解錠機器
──お届けする荷物を持った配達員だけが、解錠できるのですね。
おっしゃる通りです。ドライバーが、いつでもマンションのオートロックを開けられるようだと心配ですよね。そのため配達員が商品を持っている場合のみオートロックを開けることができ、配達が完了したらオートロックが開けられなくなります。この仕組みにより、不正な入館を防いでいます。

──日本のお客様は特にセキュリティ意識が高いですよね。
日本のお客様は特に「安心」を求める方が多く、マンションに外部の方が入ってくることを気にする傾向があります。そのため、Amazon Keyの導入時には「配送アプリでオートロックを解除することは商品を持った配達員しか行えない」ことを丁寧に説明して、セキュリティ面での不安を解消しています。
── 導入されている物件の傾向はありますか?
Amazon Key は、物件の規模や入居者の属性にかかわらず、幅広く導入されています。学生向けのマンションからファミリー・シニア向けまで、様々なタイプの物件が導入対象です。
例えばシニア向けマンションでは、重い商品を玄関まで運んでもらえる点が評価されています。また、学生向けマンションや看護師さんの寮の場合、日中不在にしているので宅配ロッカーがいっぱいでクレームになることも多いそうです。宅配ロッカーを物理的に増やせない代わりにAmazon Keyを導入したというケースも聞いています。
オーナー様や管理会社様によっても導入理由は異なりますが、共通しているのはご入居者様の利便性向上を目的にしている点です。
──Amazon Keyがあれば宅配ロッカーは不要になりますか?
宅配ロッカーとAmazon Keyは、補完し合う関係にあると考えています。ご入居者様や状況によって、商品の受け取り方の希望は異なります。
例えば小さな商品は宅配ロッカーで、大きな商品は玄関前への置き配というように、状況に応じて選択できることが理想です。そのため両方のサービスを提供することで、より多くの入居者ニーズに応えられると考えています。

「置き配」がマンション選びの新機軸になる
──Amazon Keyの導入プロセスについて教えてください。
導入プロセス自体は非常にシンプルです。オーナー様から承認を得られたら、解錠機器の設置工事を行う日程を調整します。工事自体は1時間程度で終わり、申し込みから3週間から1ヶ月程度で導入可能です。実際の運用前には管理会社様からご入居者様に向けて置き配利用規則を配布し、そこから運用開始になります。
──導入費用はかかりますか?
Amazon Keyの導入自体は無料ですが、デバイスを使用するための電気代として、年間数千円程度の費用がかかります。当社としては、再配達が減ってドライバーの負担が軽減しますし、あくまでお客様の体験を向上させるサービスの一環として捉えています。
──マンションオーナーや入居者にとってはメリットの方が多そうですね。
ご入居者様にとっては「いつでも確実に商品を受け取れる利便性」が大きなメリットです。 特に、仕事で日中不在にしている方や出張が多い方に喜ばれています。また玄関先まで届けてもらえるため、宅配ロッカーと比べて商品を持ち運ぶ負担が軽減される点も喜ばれています。
オーナー様にとっては、物件の価値向上につながると考えています。「オートロックだけど安全に置き配が利用できる」ということは、物件の魅力としてアピールポイントになるのではないでしょうか。
賃貸マンションの検索サイトでも、オートロックや宅配ロッカーの有無で物件を絞り込めるようになっています。「置き配」も、今後はそこに並ぶ検索条件として、一般的になっていくのではないでしょうか。Amazon Keyの導入は、物件の価値をあげて競争力強化につながるオプションになるはずです。

さらなる拡大を目指す、Amazon Key
──現在の普及状況と、今後の展開についてお聞かせください。
現在は1万5000棟以上に導入されており、お問い合わせも多くいただいている状況です。ご入居者様から直接お問い合わせをいただくことも多いのですが、Amazon Keyはオーナー様や管理会社様からの許可がないと導入できません。より多くのオーナー様や管理会社様に知っていただき、さらにAmazon Keyを広げていきたいですね。
──最後に、マンションオーナー様や賃貸マンションに関わる事業者様へメッセージをお願いします。
オーナー様や管理会社様は、ご入居者様のライフスタイルに合わせてより良い暮らしのお手伝いをしていくことを考えていらっしゃると思います。
近年はアマゾンに限らずオンラインでお買い物する方が増えていて、生活の中で「商品を受け取る」ことの重要度は増しています。そこをサポートする機能を考慮していくことで、ご入居者様の満足度も上がっていくのではないでしょうか。
Amazon Keyの導入は、賃貸マンション業界と物流業界の双方に貢献できると考えています。Amazon Keyにより再配達件数が減ることは、物流業界にとっても大きな意味があります。
また、賃貸マンション事業に関わる事業者様にとっては、賃貸マンションオーナー様の満足度を上げることにもつながります。是非、これからのライフスタイルに合った賃貸マンションを実現させるオプションとして、考えていただければと思います。