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東京23区賃貸マンション市場レポート。なぜ、シングルタイプが人気?

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2025.05.22

2024年度上半期(4月〜9月)、東京23区の賃貸マンション市場は、昨年度までのトレンドから引き続き、賃料の一坪当たりの賃料単価(以下、坪単価)は上昇。シングルタイプの供給減少と成約率上昇、間取りの大型化傾向などが見られた。 

賃貸マンション経営の成否を分ける最大の要因は、市場の「今」の正確な把握と、「先」を見据えた戦略的な判断にある。 

本レポートでは、不動産ポータルサイトの情報を元に、三井不動産レジデンシャルリースが賃貸マンション市場の動向を徹底分析。賃貸マンション経営の次の一手を考える上で、貴重な指針となる情報をお届けする。 

東京23区 |賃貸マンション物件の成約率・成約戸数 

シングルタイプの高い成約率が継続 

例年、賃貸マンションは社会人の人事異動により2月から4月にかけて引っ越し需要が高まる傾向がある。2024年もこの傾向は変わらず、安定した動きを示している。 

2024年4月から9月の成約率を見ると、特にシングルタイプ(1K・1R)の成約率が前年同時期に比べて上昇し、高い水準で推移している。要因として、供給数の減少、コロナ禍後の継続的な住み替え需要の高まり、東京への単身者層の転入数の増加などが考えられる。 

一方で、「1BED(1DK・1LDK)」タイプは前年同時期に成約数・成約率ともに横ばい傾向にある。「2BED(2DK・2LDK)」「3BED(3DK以上)」の成約率についても、一時的に下落が見られたものの、通年では概ね横ばいを維持している。 

シングルタイプのような成約率の高まりが見られない要因としては、シングルタイプの供給数が減少傾向であるのに対して、「2BED」「3BED」の供給数は増加傾向にあり、需給バランスによる違いであると予測できる。供給数の詳細については次章で詳しく解説する。 

今後も単身者層の東京への転入は続いていくと想定されるため、シングルタイプの需要の高まりも継続していくことが予想される。ただ、トレンドは常に移り変わるため、その時々のデータに目を向けて最適な判断を行う必要がある。 

東京23区 | 賃貸マンション物件の供給数・坪単価 

シングルタイプの供給減少と大型物件の増加 

「1K・1R」の空室供給は2023年1月以降、減少傾向が継続。一方で「2BED」「3BED」は、2024年4月以降は微減傾向にあるものの、前年同時期と比較すると増加している。 

この傾向の背景には、賃貸マンションデベロッパーの商品企画の変化がある。従来は積極的に1K・1Rの単身者向け物件を供給していたが、最近では在宅ワークの定着などライフスタイルの変化を受け、より高い賃料設定ができる広い間取りの物件を供給する傾向が強まっている。25平米程度の単身者向け物件でも1DKタイプにするなど、居室数を確保する設計が増えているのだ。 

坪単価は全タイプで上昇傾向 

坪単価については間取りにかかわらず全タイプで上昇傾向が見られる。特筆すべきは「1BED」「2BED」の坪単価が「1K」「1R」の水準を上回ったことだ。これは、より広い間取りへの需要が高まり、単身者でも間数の多い物件を選ぶ傾向が強まっていることを示している。 

「3BED」の坪単価も前年同時期に比べ1,000円程度上昇しており、ファミリー向け物件の需要も堅調。これは分譲マンションの価格高騰により、購入を控えて賃貸を選択するケースが増えていることも一因と考えられる。 

入替変動率の状況 

入替変動率(当社管理物件における既存入居者様が退去した際の賃料変動率)を見ると、「1K〜2BED」は5%台の変動率となっている。「3BED」については20%程度と突出して高い数値を示しているが、これは物件数自体が少ないため一部の特殊事例の影響を受けやすく、参考値として捉えるべきだろう。 

三井不動産レジデンシャルリースでは、市場の賃料水準に合わせた適切な賃料設定を行うことで、入居者の入れ替わり時に適正な賃料への更新を実現している。 

リーシング成功のポイント 

早期リーシングの成功には、適正な賃料設定が最も重要である。マーケットに適した賃料設定ができていれば、比較的高い賃料でもスムーズに成約に至るケースが多い。一方で、エリアのポテンシャルや物件の特性を超えた賃料設定の場合は、空室期間が長期化する傾向がある。 

適切な賃料設定のためには立地、間取り、設備などの物件特性に加え、エリアの需給バランスを正確に把握する必要がある。したがって、三井不動産レジデンシャルリースではマーケット動向の分析の他にも上述した内容を徹底的に調査を行い、リーシング計画を策定しているのだ。 

今後の見通しと対策 

現在はシングルタイプが強い需要を示しているが、これに合わせて供給が増えると、将来的には需給バランスが変化する可能性も考えられる。 

また、都心部では着工数が減少傾向にあり、建築コストの上昇により新規の賃貸物件供給は減少傾向となる見込みだ。このため、既存物件の価値を維持・向上させる取り組みが以前にもまして増えてきている。 

不動産オーナー様及び賃貸マンション関連事業者様は、市場の変化を的確に捉えて適切な判断を行うことが今後ますます重要であり、そのためにもぜひ三井不動産レジデンシャルリースの所有するデータをご活用いただきたい。

※本記事に掲載しているデータは、三井不動産レジデンシャルリース株式会社が取得するマーケット情報を基に作成(2024年12月当社調べ)

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