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【イベントレポート】建築費高騰・人手不足時代を勝ち抜く賃貸マンション経営とは? 三井不動産グループ3社が示す「次の一手」

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2026.02.10

2025年11月18日、東京ミッドタウン・カンファレンスで、三井不動産レジデンシャルリース主催 三井不動産、三井ホームとの3社によるセミナーが開催された。

セミナーの焦点は、近年の賃貸マンション経営における最大の懸念事項である「建築費・人件費の高騰への対策」であった。

本レポートでは、従来の事業モデルでは収益性の維持が困難になりつつある環境下における、市場データの分析から導き出された運営戦略、そして「リファイニング建築®」「MOCXION(モクシオン)」という建築ソリューションまで、セミナーで紹介された具体的な対抗策をレポートする。

市場の変化をチャンスに変える「4つの運営戦略」

三井不動産レジデンシャルリース株式会社
賃貸運営本部 事業法人部

第一部の冒頭、事業法人部長の小谷 徹は「建築費、人件費の高騰などにより開発環境が大きく変わってきている」と危機感を示しつつ、「コスト上昇の影響を少しでも抑えられるように、収益向上に向けた取り組みにチャレンジしている」とコメントした。

三井不動産レジデンシャルリース株式会社 事業法人部長(取材当時) 小谷 徹

続いて登壇した事業法人部の弘中 克史は、具体的な市場データを示しながら解説を行った。東京の建築工事費は2015年から2025年までの直近10年間で約140%まで上昇しているという。(※1)背景には資材価格の高騰に加え、2024年4月から建設業にも適用された時間外労働の上限規制(いわゆる2024年問題)の影響も受けた人手不足がある。

一方で、賃貸マンションのマーケット自体は活況を呈している。弘中は「開発運用コストの上昇には追いついていないものの、国内の賃貸マンションマーケットは非常に好調に推移している」と語る。特に成約賃料坪単価の上昇トレンドは都心から準都心、郊外へと波及しており、足立区や江戸川区などでは10年前と比較して50〜60%の増加率を示しているデータも紹介された。(※2)

※1 出典「⼀般財団法⼈ 建設物価調査会」
※2 三井不動産レジデンシャルリース管理物件における実績

三井不動産レジデンシャルリース株式会社 事業法人部(取材当時) 弘中 克史

こうした環境下で三井不動産レジデンシャルリースが提示しているのは、「従来の慣習にとらわれない柔軟な発想」による4つの施策である。

一つ目は「テナント契約更新時の賃料値上げ」だ。三井不動産レジデンシャルリースでは契約更新対象の過半数で値上げを実現している。弘中は「交渉は一度きりで終わりではなく、状況に応じて数回にわたって交渉している」と述べ、粘り強い実務の重要性を強調した。

二つ目は「定期借家契約の活用」である。相場上昇時のマーケットにおいて、契約満了時に貸主主導で賃料改定でき、値上合意に至らない場合は契約終了できるといった柔軟な対応が可能である。

三つ目は「条件設定の最適化」。一時金設定等、賃料以外の諸条件についてもエリアごとの需給状況をきめ細かく分析して、収益最大化を図るための最適化に注力している。

そして四つ目が「バリューアップ工事」だ。単なる原状回復ではなく、想定入居者層分析に基づいたリノベーション工事を行う。例えば、3点ユニットバスの解消や、収納の使い勝手を改善するワンルームの間取り変更などで、賃料を40%アップさせた事例が紹介された。(※3)弘中は「築年数が経過した物件でも適切な改修により競争力を再構築することができる」と語った。


※3 三井不動産レジデンシャルリース管理物件における実績

建て替えに代わる第3の選択肢「リファイニング建築®」

三井不動産株式会社 ソリューションパートナー本部
レッツ資産活用部

第2部では、建築費高騰に対する直接的な建築ソリューションとして「リファイニング建築®」が紹介された。登壇した日下部 裕貴氏は、現在の市況について「鉄筋コンクリート造(以下RC造)の賃貸マンションにおいては、建築工事費が坪あたり200万円以上の価格となることも少なくない」と指摘する。

このコスト高騰は、建て替え事業の収支悪化を招いている。日下部氏が示した試算によれば、投資利回り(NOI)5%を確保するためには、坪単価200万円〜220万円の建築工事費に対して、賃料坪単価1万8000円〜2万円程度が必要になる。つまり、「都心の好立地でない限り十分な投資利回りが期待できず、建て替えの選択肢が困難となる」のが現状だ。

そこで提案されたのが、青木茂建築工房が提唱する再生建築手法「リファイニング建築®」である。これは、既存の躯体(柱・梁など)を再利用しながら、耐震補強と設備・内装の一新を行い、検査済証を再取得して「新築同等」に再生させる手法だ。

三井不動産株式会社 ソリューションパートナー本部 レッツ資産活用部 日下部 裕貴氏

日下部氏は「リファイニング建築®」のメリットとして、以下の3点を挙げた。

一つ目は、容積率制限等、建築当時との法規制の変更により、建て替えると規模が縮小してしまう物件でも、既存の建物規模を維持できることである。(※4)

二つ目は、デザイン性を犠牲にすることなく耐震補強が可能であること。

そして三つ目は、高い事業性を兼ね備えていることである。建て替えと比較して建築工事費を約70%に圧縮し、また建築工期も短縮できるにも関わらず、新築比90%程度の水準での家賃設定が可能であるという。

「リファイニング建築®」を採用した「シャトレ信濃町」(※5)の事例では、建て替えの場合には容積率制限により9階建てから5階建てへと建物規模が縮小してしまうところを元の9階建てのまま再生した。間取りを現代のニーズに合わせて刷新し、募集当時における周辺の新築賃貸マンション相場と同等水準の賃料での稼働を実現している。

※4 避難経路の確保など一定の要件を満たす必要があります。
※5 三井不動産レジデンシャルリース管理物件。2022年5月「リファイニング建築®」実施

「RC造」建築費高騰時代に「木造」という解「MOCXION(モクシオン)」

三井ホーム株式会社
施設・賃貸事業本部 コンサルティング第一営業部

第3部では、三井ホームの須田 祐介氏が、中高層木造マンションブランド「MOCXION(モクシオン)」(以下モクシオン)について解説した。RC造マンションにおける昨今の建築費高騰を受け、木造マンションであるモクシオンへの問い合わせや依頼が増加しているという。

須田氏は、RC造と比較した際の木造のメリットとして「建築コスト」と「建築工期」を挙げた。木造は建物自体が軽量であるため、地盤改良で済むケースが多く、高額な杭工事や基礎補強が不要になる場合がある。また、RC造に比べて建築工期を短縮できる可能性があり、金利や仮設費用の圧縮につながる。さらに、保有コストである固定資産税もRC造と比較して約3割安くなるという。

三井ホーム株式会社 施設・賃貸事業本部 コンサルティング第一営業部 須田 祐介氏

また、投資家にとって関心の高い減価償却についても言及があった。通常、木造の法定耐用年数は22年だが、モクシオンは高い耐久性・遮音性・断熱性の評価を得ており、「RC造マンション同等として47年の償却で運用することも、木造として22年での償却を選択することも可能」だという。(※6)これにより、法人の財務戦略や個人の相続税対策において非常に柔軟な運用が可能になる。

性能面でも木造の進化は著しい。須田氏は「木は熱を通しにくく鉄の約350倍熱を伝えにくい」と述べ、高い断熱性能によってZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)基準のクリアが容易である点を強調した。

また賃料水準についても、実例として紹介された「モクシオン稲城」では、周辺相場より高い賃料設定で募集したにもかかわらず満室稼働を実現。(2022年1月時点)須田氏は「木造マンションだからといって賃料を下げるのではなく、木造ならではの商品特性を差別化要因として評価して、逆に賃料を上げて募集していただいている実績がある」と自信を見せた。

※6 企業会計において法定耐用年数を超える減価償却期間を採用する場合には、公認会計士等との協議が必要となります。

グループ総合力による「横串」の支援

三井不動産株式会社
ソリューションパートナー本部 法人ソリューション部

最後に登壇した三井不動産 法人ソリューション部の森 英城氏は、同社の立ち位置を「お客様の起点で横串の機能を持っている」と説明した。住宅に限らず、オフィス、商業、物流、さらにはライフサイエンスや宇宙ビジネスといった新産業まで、グループ全体のリソースを繋ぐ役割を担っている。

三井不動産株式会社 ソリューションパートナー本部 法人ソリューション部 森 英城氏

森氏は、「日本で1,2を争うほどのたくさんのご相談を受けている」とグループの規模感に触れ、その膨大なデータに基づいたコスト感覚や業界動向を的確にとらえる力を強みとして紹介した。さらに昨今のトレンドとして、建築費の高騰分を価格転嫁しやすいアセット(データセンターやホテルなど)への転換や、アクティビスト対応、事業承継といった経営課題への支援事例も取り上げた。最後に「不動産に関するお困りごとがございましたら、どんなことでもお声がけください」と呼びかけ、単なる資産の売却・収益不動産の取得、資産管理にとどまらず、保有資産の収益事業化の提案やグループ内各事業との連携を通じ、多角的な資産戦略パートナーとして伴走する姿勢を示した。

建築費高騰時代を生き残るには?

本セミナーで明らかになったのは、コスト上昇という逆風の中で安定的な賃貸マンション経営を続けるには、待ちの姿勢ではなく、積極的な収益性向上策が不可欠だということである。そのためには、「従来の慣習にとらわれない柔軟な発想」を軸に、プロパティマネジメント業務の深化や想定入居者層に応じたバリューアップ工事、建て替えに代わるリファイニング建築®、さらには木造マンションという新たな選択肢などs、ソフト・ハード両面での戦略が求められる。

本日紹介されたソリューションは、まさにその第一歩である。これからの時代に勝ち抜くためには、専門性と経験を武器に、変化を先取りする意思決定が何より重要になるだろう。

セミナー終了後の交流会の様子

セミナー終了後には、ご参加いただいた事業法人オーナー様を対象に交流会を開催しました。
本交流会は、オーナー様同士のネットワーク構築や情報交換を促進することを目的としており、収益物件の売買など、事業展開に資する機会の創出につながる場となれば幸いです。

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