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【イベントレポート】最新の賃貸マンション市場分析と賃料値上げのノウハウ
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2026.03.12

2026年2月3日、三井不動産レジデンシャルリース主催による、賃貸マンションに関わる事業関係者様向けイベント「MFRL Forum」が開催された。本イベントのテーマは『激動の賃貸マンション市況を共に学び、共に創る。』。第一部では、最新データに基づく東京23区の賃貸マンション市場動向や、検討案件の見極め方、そして商品企画トレンドについて解説された。続く第二部では、インフレ下で注目が集まる賃料値上げのノウハウについて、最前線の現場経験をもとに、対談形式で紹介された。
日経平均株価と連動する賃貸マンション市場
第一部:
23区賃貸マンション市場徹底解説
登壇者:
三井不動産レジデンシャルリース株式会社
プロジェクト営業本部 プロジェクト営業二部 林 健二
「ここでクイズです」。冒頭、林は「入替時賃料変動率(※)」と「ある指標」を重ねたグラフを提示し、参加者に問いかけた。
※ 三井不動産レジデンシャルリース管理物件における借主様の入れ替わり時の賃料改定率

その指標の正解は「日経平均株価」である。
林は、「当社の入替時賃料変動率と日経平均株価には相関性が見られます。あくまで全体傾向ではありますが、日経平均株価に連動して入替時賃料変動率が追随しており、市場動向を把握するうえで非常に参考になる指標です」と解説する。
過去25年を振り返ると、賃貸マンション市場が大きくダウンサイドに転じたのは、アメリカ同時多発テロ、リーマンショック、そしてコロナ禍の3回である。特筆すべきはその回復力だ。
林は「賃貸マンションは大きく値下がっても、比較的短期間で回復できる安定したアセットであると言えます。コロナ禍でも、賃貸住宅においては一時的に稼働率が下がったものの、そこから高い稼働率へと回復し、入替時賃料変動率もコロナ禍前の水準を上回るようになっています」と述べ、賃貸マンションという資産の安定性を強調した。
独自データを用いた東京23区賃貸マンション市場の分析

プロジェクト営業本部 プロジェクト営業二部(取材当時) 林 健二
続いて、林は現在の東京23区の賃貸マンション市場における賃料について、データを用いて解説した。
東京23区の平均成約坪単価は、この一年で各エリア5〜10%ほど上昇している。林は、「港区では平均成約坪単価がついに20,000円を超えました。また、かつては17,000円を超えているエリアは3区のみでしたが、2025年(通年)には7区まで増加しています。さらに、大田区や北区・荒川区といった外周部でも14,000円を超え、賃料上昇エリアの範囲が確実に広がっています」と語る。
また間取り別の動向については、意外なデータが示された。かつて供給過多と言われていた「1K・1R」タイプだが、現在は募集在庫数がピーク時に対して半減しており、賃料も上昇傾向にあるという。一方で、注意が必要なのが「2BED(DINKS・ファミリー向け)」以上のタイプだ。
「コロナ禍以降、『部屋数重視』の傾向が強まり、供給が増えた結果、募集在庫が積み上がりつつあります。シングルタイプは募集在庫に対する月間成約率が40%を超え好調ですが、2BEDや3BED以上では、好調の目安となる同成約率30%を下回るケースも出てきています」(林)
そのほかに、数年先までの東京23区賃貸マンションの竣工予定や、建築コストの上昇傾向についても触れたうえで、「賃貸マンションマーケットは引き続き好調で上昇を続けているものの、建築コストの上昇や事業者間の競争も激しく、新築賃貸マンション事業を推進する難易度は年々高まっています」とまとめた。

建築費高騰時代における「マーケットニーズを捉えた商品企画」の勝機
次に、事業対象物件を選定する場合の切り口として、新築、中古、土地の3つのケースについてそれぞれ解説がおこなわれた。
建築費や物件取得価格の高騰が続く中、林が「狙い目」として挙げたのが中古物件である。データによれば、築年数が経過した物件であっても、入替時賃料変動率(※)は上昇トレンドにある。
「10年前、20年前の中古物件であっても、適切な商品企画に基づいたリノベーションを行えば、新築物件に迫る賃料収入を実現することも可能です。『築年数の経過=賃料下落』という従来の構図は、変わりつつあります」(林)
また林は、保有土地や新規取得土地における賃貸マンション事業企画推進にあたっては、「計画段階からのコンセプト決めが重要です」とし、マーケットのニーズや様々な最新トレンドを把握している賃貸管理会社との連携が非常に有効であると説いた。そして三井不動産レジデンシャルリースでは、豊富な管理実績とデータをもとにエリアごとの需給を見極めた、マーケットニーズを捉えた商品企画や、築年数が経過しても長期的に優位性のある商品企画を提案していることを強調した。
※ 三井不動産レジデンシャルリース管理物件における借主様入れ替わり時の賃料改定率
インフレ下における「賃料値上げ」現場の最前線
第二部:
賃料値上げのリアルとノウハウ
登壇者:
三井不動産レジデンシャルリース株式会社
プロジェクト営業本部 プロジェクト営業二部 桐村 和随
賃貸運営本部 運営二部 乾 佳太
冒頭、桐村は「なぜ今、賃料値上げのタイミングなのか?」をテーマに、市況・原価上昇・物価上昇等の要因を示したうえで、「現状は賃料値上げを行いやすいタイミングです」とコメントした。インフレ基調の下、賃貸マンション経営に必要となる様々なコストが上昇する中で、「単に新規募集で高く貸すだけでなく、既存契約の継続賃料も適正化し、オーナー様のNOI(純収益)が向上するように努力することが我々の役割です」と桐村は力を込める。
実際に、三井不動産レジデンシャルリースの管理物件において、更新時の賃料値上げについては一定の成果をあげている。また賃料値上げ幅については、「オーナー様からの要望も踏まえて、協議が難航する場合であっても、少しでも増額していただけるように借主様との合意形成が図れるよう、粘り強く取り組んでいます」と桐村はいう。

プロジェクト営業本部 プロジェクト営業二部(取材当時) 桐村 和随
賃料値上げを実現させる戦略とアクション
では、具体的にどのようなケースで賃料値上げが実現し、またどのように当事者間で合意形成を図っているのか。乾は以下のポイントを挙げた。
「賃料値上げが実現する代表的なケースとしては、契約賃料と市場価格との乖離が大きく、値上げの妥当性について借主様からの理解を得られやすい場合が挙げられます。この点では、第一部でもご説明したとおり、現在は賃料上昇傾向が強まっていることを多くの借主様がご存じですので、これまでよりも賃料値上げが実現するケースが増えているのだと思います。また、借主様にご理解いただくためには、当該物件や近隣物件における成約事例を詳細に把握したうえで、賃料値上げの根拠をわかりやすくご説明することを心掛けています」(乾)
協議が難航した場合、多くのコストと時間が必要になる。ここで桐村は、実際に自身が担当した事例を紹介しながら、「大幅な値上げをするためにコストと時間を費やすよりも、話し合いにより僅かでも賃料値上げを実現する方が、トータルで考えた場合には多くのケースでオーナー様にメリットがあると思います」と語った。

賃貸運営本部 運営二部(取材当時) 乾 佳太
「定期借家契約」への転換と今後の展望
対談の最後には、今後の展望として「定期借家契約」への移行が示された。
従来の「普通借家契約」では、マーケット状況に応じてタイムリーに賃料水準を適正化していくことが難しい面がある。
そこで注目されるのが、契約期間満了で再契約(または終了)となる定期借家契約だ。 定期借家契約であれば、契約時点のマーケット水準を基準とした契約賃料に合わせていくことによって、オーナー様にとっては賃貸経営の確実性と収益最大化の可能性を高める効果を期待できる。
さらに「定期借家契約は賃料が低くなる」というこれまでの通説に対しても、乾は「最近の傾向として、都心部の高額住戸においては、普通借家契約と定期借家契約とでは賃料に差がほとんどない印象です」と述べ、また「借主様においても再契約相談可と明示することで、定期借家契約が抵抗感なく受け入れられるケースが増えています」とし、マーケットの変化を指摘する。
変化を先取りする「戦略的プロパティマネジメント」の時代へ
本フォーラムを通じて浮き彫りになったのは、賃貸経営を取り巻く環境の複雑化である。 好調なマーケットの一方で、建築費高騰や物価上昇など、短期的には解消し難い課題も存在する。
激動の市況を勝ち抜くためには、正確な市場データの把握と、それを企画や現場での説明に活用していく実行力が求められる。
賃貸マンションオーナー様および関連事業者様は、賃貸マンション市場の変化を的確に捉えて適切な判断と選択を行うことが今後ますます重要であり、そのためにもぜひ三井不動産レジデンシャルリースの知見をご活用いただきたい。


