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不動産ポータルサイト、だけじゃない。SNS & AI時代の「これからのリーシング戦略」とは?
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2026.02.18

これまで賃貸物件の募集といえば、大手ポータルサイトへの情報掲載が一般的な手段だった。しかし、SNSの普及や生成AI技術の進化により、入居検討者の部屋探しにおける情報収集行動は変化し始めている。
不動産ポータルサイトに掲載するだけでは、十分とは言えない。こうした状況の中で、三井不動産レジデンシャルリースはどのように「これからの時代のリーシング」と向き合っているのか。
三井不動産レジデンシャルリース プロパティマネジメント推進部リーシング推進課の白鳥 乃雅(のぶまさ)に話を聞いた。

三井不動産レジデンシャルリース株式会社 プロパティマネジメント推進部 リーシング推進課長(取材当時) 白鳥 乃雅
リーシングを取り巻くメディア環境の変化
── 近年、入居検討者様の物件探しはどのように変化しているのでしょうか。
白鳥:かつてはリーシングの主戦場といえば、街の不動産仲介会社様(以下、仲介会社様)の店頭に貼られた物件情報や、不動産仲介会社担当者様からの物件紹介でした。しかし現在は、入居検討者様(以下、お客様)が仲介会社様や賃貸情報サイトを訪れる前に、自分自身で情報収集を行うスタイルが定着しています。情報収集元にも変化が見られ、賃貸情報サイトだけでなく、Instagram などのSNSやAI検索も活用され始めています。
私たちはこの現状を、情報収集中の行動が「二段階のプロセス」へ変化していると捉えています。
「一次検索」は情報収集の入口です。エリアや家賃相場、欲しい設備、あるいは「理想の暮らし」のイメージを固める段階。ここではSNSやChatGPT、検索サイトのAI回答などが、情報の「入り口」として機能しています。
「二次検索」では具体的な物件の絞り込みを行います。一次検索で自分の希望や条件が固まった後に、賃貸情報サイトなどでエリアや条件を絞り込んで検索する。いわゆる「選定」の段階です。
── 一次検索は、どのくらいの検討期間になるのでしょうか。
白鳥:興味深いデータとして、具体的な物件探し(二次検索)に入る前の「検討・情報収集フェーズ(一次検索)」におよそ2〜3ヶ月のリードタイムが存在することが分かっています。(※1)以前はこの期間に、お客様にアプローチする手段がほとんどありませんでした。しかし今、このリードタイムの間にいかに自社の物件やブランドを認知してもらい、記憶に残してもらうかが、リーシングのポイントになっています。
今は情報が容易に手に入る反面、接触する情報量が膨大すぎて、一度見ただけではすぐに忘れられてしまいます。さらに、情報取得するメディアも多様化しています。そのため、賃貸情報サイト、SNS、自社記事サイトといった複数のメディアを活用し、お客様に対してメディアから複数回にわたって接触することが重要です。
※1 株式会社リクルート調べ

単なる「募集」ではない、リーシングの定義変更
──三井不動産レジデンシャルリースとしては、今まさに変化しているリーシングに、どのように向き合っていくのでしょうか。
白鳥:私たちは、リーシングを単なる「空室を埋めるための募集業務」とは考えていません。それは、オーナー様の資産価値を守り、収益を最大化するためのプロパティマネジメントそのものであると定義を変更しています。
これまでの賃貸管理業界では、管理会社から仲介会社様へ情報を提供する「BtoB」の動きが主流でした。しかし、お客様の行動が変わった以上、私たち管理会社がエンドユーザーに向けて発信する「BtoC」のメディアを通じて、直接的な接点を持つことが重要です。
私たちが目指すのは、お客様が仲介会社様や賃貸情報サイトを訪れた際に「当社の管理物件を指名していただく」ことです。特定の物件名や「三井の賃貸」というブランドで指名が入ることは、成約率を高めて、オーナー様に長期的な稼働安定と資産価値の向上という効果をもたらします。
── 仲介会社様へのアプローチと、お客様への直接発信。この両立が重要ということでしょうか。
白鳥:その通りです。従来通りの仲介会社様へのアプローチも引き続き重要ですが、お客様に直接発信することで、仲介会社様への営業活動をフォローする効果も生まれます。お客様から「この物件が見たい」という指名があれば、仲介会社様も成約の見込みが高い物件として優先的に案内してくださるようになるからです。このように、「BtoB」と「BtoC」の両面からアプローチすることで、他社との差別化を図りたいと考えています。
独自のリーシングメディア戦略と「くらし」の提案
── 記事サイト「くらしと賃貸 MAGAZINE」とInstagram、それぞれ立ち上げた背景にはどのような狙いがあるのでしょうか。
白鳥:従来のメディアは、すでに引っ越しを決めている「顕在層」に向けたものでした。一方で、私たちは引っ越しの意思はあるが具体的な検討に至っていない「潜在層」へ発信する手段を必要としていました。
スマホを眺める「隙間時間」に日常的に触れてもらい、「三井の賃貸」に住みたいというイメージを醸成したり、漠然とした引っ越しへの不安を解消したりすることで、当社とのつながりを生むのが狙いです。

── 記事サイトでは、あえて「物件情報を前面に出しすぎない」設計にされているそうですね。
白鳥:宣伝に偏った情報は、特にSNSに親しんだ世代では距離を置かれがちです。まずは読み手の疑問に寄り添い、役立つ内容として受け止めてもらうことが大切だと考えています。
そのため、メディアごとに明確な役割を持たせています。Instagramは能動的ではなく受動的に楽しむメディアです。ここでは物件のスペック紹介だけではなく、リール投稿やフィード投稿を通じて「素敵な暮らしのイメージ」や「新しい発見」を提案し、感情に訴えかけることを優先しています。
一方、記事サイトは引越しに関する不安や疑問を解消するためのメディアです。検索エンジンから流入する、悩みを持ったユーザーに対し、信頼できる解決策を提示する。その先に、当社の豊富な管理物件の中から最適な物件を提案するという、一気通貫の設計にしています。
── 運用の中で、特に手応えを感じている点はありますか。
白鳥:Instagramにおける「保存数」の多さには注目しています。Instagramは情報が流れていくフロー型のメディアですが、保存されるということは「後でもう一度見直したい」「将来の参考にしたい」という強い興味の表れです。
また、今月の新規管理物件をまとめた投稿なども、「管理会社だからこそ出せる、信頼性の高い最新情報」として、ユーザーから評価されていると感じます。こうした地道な情報のストックが、将来の入居者候補の形成に繋がっていくことを期待しています。

AIの浸透でリーシングの未来が変わる
── 今後、賃貸マンションのリーシング環境はさらにどのように変化していくと予測されていますか。
白鳥:最大の変化の要因は、AIの更なる浸透です。将来的に、ユーザーは検索窓にキーワードを打ち込むのではなく、AIに「恵比寿で家賃〇万円以下、日当たりの良い静かな部屋を提案して」と問いかけ、AIが推薦する物件を選ぶお客様が増えていくかもしれません。
また、VRや360度画像、動画の活用により、「内見せずに契約する」というスタイルも一部で定着しつつあります。Instagramの動画コンテンツなどは、単なる集客だけでなく、現地に行かなくても「ここに住みたい」という安心感や納得感を生むための強力なツールになると考えています。
このような時代の変化を捉え、先を見据えた情報提供や発信をしていくことが大切だと考えています。

── 最後に、今後の展望をお願いします。
白鳥:私たちの目標は、管理会社そのものがお客様にとっての信頼の指標となり、選ばれる理由になることです。「『三井の賃貸』だから住みたい」「『三井の賃貸』なら安心だ」と思っていただけるファンを増やすこと。それは、当社管理物件にお住まいの入居者様が次もまた当社の管理物件を選んでくださるような、継続的なつながりの構築でもあります。
管理会社としての質の高い運営体制、例えばご入居者専用の24時間対応コールセンターや、万が一の際の迅速なトラブル対応といった実務面での信頼。これらは表に出にくい部分ですが、メディアを通じて発信していくことで、『三井の賃貸』そのものを付加価値のあるブランドへ昇華させていくことが理想です。
【記事サイト】
くらしと賃貸 MAGAZINE - 三井不動産レジデンシャルリース
【Instagram】


